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ここは、群馬大学教育学部美術教育講座・教授のモギ カズジが研究やプロジェクト(ワークショップ・講義・業績など)をアップしているWebサイトです。

「万人のための教育(EFAEducation for All)」は、現在世界中に「読み・書き・そろばん(計算)」といった基礎教育を受けられない立場にある者が多いなかで、各国が協力しながら、国連ミレニアム開発目標(MDGs)に基づき、 世界中の全ての人たちが初等教育を受けられる、字が読めるようになる(識字)環境を整備しようとする取り組みで、ユネスコを中心として世界中の協力によって進められている大きな運動です。
私の「みんなのための美術教育」も(教育全体の中で)美術教育自体がマイノリティのこともありますが、人間は芸術的に生きていくことがその社会や個人の生を豊かにすることだと考えています。
2000年以降、故郷の群馬に戻ってから、時間数を削減などによって、先細っていく(広義の)美術/教育をもう少し広いスタンスで捉え直そうと考え、美術/教育をメディアの学習として再構築できないかと思考(試行)しています。大事なのは全体であって部分ではありません。障がいの有無、学問・芸術・道徳などの専門性に分けて、それらを教科に分けて学ぶ方法。これらは効率とスピードを優先する近代が生みだしたシステムです。アートはそういう冷たくなったモダニズム化を心(愛)によってあたため再統合します。芸術でさえ、音楽、ダンスや演劇と美術にはほとんど接点がありません。この状態が幸せであるはずがありません。
わたしはヒト・モノ・コトすべてをメディアとして捉え、身体メディアを活かしたした新しい「表現の学び」として提案すべく、日本文化・美術をツールとした異文化理解・多文化共生を目的にした題材開発や障がいをもった子どもたちとフラットな関係性をつくる、たくさんのワークショップに取り組んできました(その実際についてはHPをご覧ください)。
「インクルーシブアート教育」の実際の目的は2つあります。1つは、障害を持つ子どもたちに本当に必要なアートの教育・研究は十分ではない。いわゆる特別支援の美術教育にもっと理論的実践的な研究と蓄積が必要という現実的な問題(これについては、視覚障がい美術教育に取り組んでいます)。2つは、アートの教育はむしろ共生社会構築の基盤になるだろうということ。障害を含めてすべての人が共存共栄するインクルーシブな社会にはアートのような、差異や多様性を前提に、それを活かし、それぞれの個性を調和させながら全体をつかむ統合的総合的な(教育)力が基礎になるべきではないか。アートが知情意の調和(情=アートによって知と意をが結ばれる)をはかり、断片化した知(ボーム,D)を再統合することは、人々が感情によって右往左往する現代のメディア社会には必須の学習ではないか。こんな問題意識の中で、インクルーシブアート教育とは、アートが人間の尊厳を保つために必要な「自由」を保証し、現代社会/教育を見直す理念と実践になることの提案です。したがって、インクルーシブ教育は障害者に限定されるものではなく、例えばOECDが指摘する社会経済・文化的な課題のある子どもたちなど、すべてのマイノリティを包摂する教育のことをいいます。
そんなことを考えていると、(学校)教育の枠を超えていきます。テーマは「アート(芸術文化)による社会包摂」です。それは多様な個性を何かのために活かすことではなく、個人が主体的に社会に関わり、より高次の精神世界に触れようと志をもち、実践していくこと。アートの学びだけがそのことを可能にするはずです。わからない・みえないからといって、けっして否定しないという身体技法はこれからの世界を行く抜く唯一の方法ではないでしょうか。
そのような哲学と方法をもって、現代のメディア社会、「関係性の時代」を自由に生きていきたいものです。いっしょに考えていきたい方にはぜひご協力をお願い申し上げます。